声を届け、まちを照らす ―― 金沢シーサイドFM 松原勇稀社長 インタビュー
「助けたいと思った。でも、自分ひとりじゃ無理だった。だから“伝える”ことに決めたんです」
海と山と、人の暮らし。
絶妙なバランスで成り立つこのまち、横浜市金沢区に拠点を置く地域ラジオ局――「金沢シーサイドFM」。
今回、ナンヨコDAYSではこのラジオ局を立ち上げた松原勇稀社長に、起業の原点と未来へのビジョンについて伺いました。

■ 地元出身、ラジオ起業家。松原勇稀という人
2000年、金沢区に生まれた松原さん。
8歳のとき、テレビで見たダルビッシュ選手に心を撃ち抜かれ、もともと続けていた水泳から野球へ転向しました。
その後、高校ではダルビッシュ選手の恩師が監督を務める名門・埼玉県の高校へ進学。寮生活で野球に打ち込みながらも、金沢区を「外から見る」きっかけにもなったと語ります。

高校球児時代の松原さん↑
大学は地元・関東学院大学へ。野球を続けるも「自分の限界」を感じ、1年で区切りをつけました。
新たにのめり込んだのが、ゼミでのローカルラジオ研究でした。

■ 台風、沈黙、そして「ラジオ」という選択
転機は2019年。
神奈川県を襲った大型台風により、金沢区の工業地帯では高波や浸水による多大な被害が発生しました。
「通信機器が使えなくなって。企業や住民の方から、“いま、金沢区で何が起きているのか知りたい”という声がたくさん上がったんです」
地域コミュニティラジオが災害時や地域活性に果たす役割を研究していたゼミに興味を持ちました。
「これは、ラジオが必要だ」
その小さな研究ラジオを引き継ぎ、大学3年生で金沢シーサイドFMを法人化。
地元に本格的なラジオ局を誕生させたのです。
■ 夢だけじゃ続かない。立ち上げ当初の苦労
「今どきラジオ?」「なぜラジオなの?」
最初は、ほとんどの人が怪訝な顔をしたと言います。
資金調達では地元企業を何十社も回りましたが、なかなか理解されなかった。
それでも、松原さんの足は止まりませんでした。
地元企業や住民の“応援してくれる人”の存在が、何よりの支えになったと語ります。
利益を度外視して開催した地域イベントも、やがて輪を広げ、今では“地域のコミュニティメディア”としての役割を果たすまでに。
「諦めなかった。ただそれだけです」
■ 「誰かを助ける」には、まず「伝える」ことから
松原さんの原動力には、もうひとつ強い想いがあります。
それは、ご実家が金沢区で営んでいた飲食店での出来事。
コロナ禍で客足が遠のき、テイクアウトやお弁当サービスを始めたものの、うまくいかなかった。
「誰にも知られていなかったんです。営業していることも、テイクアウトを始めたことも」
そこで痛感しました。
「情報が届かなければ、どんなに頑張っても意味がない」
ラジオという“伝える力”を使って、地域で踏ん張る小さな飲食店や企業に光を当てる。
自分が助けるのではなく、**「伝えて、みんなで助け合う」**地域をつくりたい。
それが、シーサイドFMの根底にある想いです。

■ 次の目標は「地域外」へ。還元型メディアへの進化
ーー今後の目標を教えてください。
「地域内での情報インフラとしての役割は、ある程度達成できたと思っています。これからは“地域の魅力を外へ発信する”フェーズへ移りたいです」
実際、すでに**「ラジオ×動画」**という形で新事業を展開中。
プロモーション動画の制作など、地域外企業との連携も進めています。
「地域外から収入を得て、地域内に還元する“循環”をつくりたい」
■ 金沢区の魅力とは?
最後に、松原さんに**“金沢区の魅力”**を聞いてみました。
「立地ですね。海も山もあるし、鎌倉や湘南にもすぐ行ける。でも都心までも1時間以内。しかも、まだ土地も安い」
さらに、大学時代の研究からも、金沢区の強さは見えていたといいます。
「金沢区って、閉業率が低いんです。企業もお店も、3年以上続くところが多い。それはつまり、“人とのつながり”が強いということなんですよね」
このまちには、人を支える“関係性”が息づいている。
それが、松原さんの確信です。
■ 若者たちへ。「地元で働く」という選択肢を
最後に、こんな言葉をいただきました。
「10代・20代の人たちに伝えたいです。“地元の企業で働く”っていう選択肢、もっと増やしてほしい」
「都会で働くのもいい。でも、自分のルーツがあるまちに貢献できる仕事も、すごく豊かです」
声は、まちを照らす。
若き局長の挑戦は、これからも続く。

📻 金沢シーサイドFMとは?
横浜市金沢区に拠点を構える地域密着型ラジオ局。
「まちの声を、まちの人へ」をテーマに、地域情報・防災・イベント・インタビューなど幅広い番組を放送。
金沢区内の企業・店舗との連携や、若者の地元就職促進、プロモーション動画制作など多角的に展開中。
公式SNSやYouTube、Webラジオなどでも積極的に情報を発信している。
神奈川県横浜市出身。金沢区の工務店アートテラスホームで広報を担当。漫画と温泉旅行が好き。ナンヨコDAYSでの発信を通して、大好きなナンヨコと皆様の出会いをつくっていきます!




地域の魅力を発信し続けるシーサイドFMの存在が、改めて地域コミュニティにとって欠かせないものだと感じました。
これからもシーサイドFMが地域の声をしっかり届けてくれることを期待したいと思います。