2025.05.26
職場における熱中症対策の強化
― 職場の熱中症対策、6月1日から義務化へ ―
違反には罰則も!
厚生労働省は、6月1日から職場での熱中症対策を事業者に義務付ける省令を施行します。
【具体的な義務内容】
1.緊急時の連絡体制の整備
熱中症の自覚症状がある人や疑いのある人が出た場合の緊急連絡先や担当者を決めるなどの体制整備を事業所ごとに定める
2.作業中止や身体冷却、医療搬送などの手順策定
作業からの離脱、身体の冷却、医療機関への搬送など重症化防止のための手順を事業所ごとに定める
3.作業者への周知
職場での対策の内容を作業者に周知する
事業者が上記の熱中症対策を行う必要があるのは、「熱中症を生ずるおそれのある作業」を行うときです。
【熱中症を生ずるおそれのある作業とは?】
「暑さ指数(WBGT)28以上」または「気温31度以上」の環境で、
1時間以上または1日4時間を超えて作業する場合です。
引用元:厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」
【義務化の背景】
背景には、熱中症による労働災害の増加があります。
2023年には30人が死亡し、4日以上の休業者も1000人超。多くのケースで、初期症状への対応が遅れたことが重症化につながったと分析されています。
【対策を怠った場合】
・熱中症対策を怠った事業者は、都道府県労働局長などから作業の停止や建設物等の使用停止・変更 などの使用停止命令等を受けるおそれがあります(労働安全衛生法第98条)
さらに、
・熱中症対策の実施義務に違反した者は、6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処され(労働安全衛生法第119条1号)
・法人に対しても50万円以下の罰金が科されます(労働安全衛生法第122条)
【上記以外にも、取り組むべき対策は?】
1.暑さ指数(WBGT)の把握・評価 ※下にWBGT説明アリ
・日本産業規格に適合したWBGT計を使用。
・作業場所ごとの状況を考慮した評価が重要。
2.作業環境の管理
・通風・冷房設備、ミストシャワー、日陰の確保など。
・冷房付き休憩場所の設置と、横になれる広さの確保。
3.作業時間の調整
・基準を大きく超える場合は原則作業中止。
・やむを得ず行う場合は、単独作業の回避・こまめな休憩・健康確認が必要。
4. 暑熱順化の促進
・少なくとも7日間かけて身体を暑さに慣らす。
・新規採用者や長期休暇明けの人には計画的な順化が必要。
5. 水分・塩分補給
・のどが渇いていなくても定期的に摂取。
・塩飴などの補助食品も活用。
・摂取状況の記録や巡視も有効。
6.服装の工夫
・通気性・吸湿性の良い衣類や帽子を着用。
・冷却効果のある衣類やインナーも活用可能。
7.プレクーリング(作業前冷却)
・作業前に体を冷やすことでリスク軽減。
・冷却ベストやアイスパックなどのグッズを活用。
8.健康管理
・基礎疾患がある人への配慮。
・作業前・作業中の体調チェックを徹底。
9.労働衛生教育
・管理者・労働者双方への教育を実施。
・公的教材の活用や外部機関による教育も検討。
10.異常時の迅速対応
・体調不良を訴えたら即時作業中止・冷却・救急対応。
・本人が「大丈夫」と言っても油断せず対応。
11. 熱中症予防管理者の設置
・対策責任者を明確化。
・作業現場との連携と、事前の対応手順整備が重要。
暑さ指数(WBGT)とは?
WBGT(湿球黒球温度:Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症の危険度を評価するための指標です。
単なる気温だけでなく、湿度・日差し・風の有無などを総合的に反映しているのが特徴です。
◆なぜWBGTが重要なの?
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人は気温が高いだけではなく、湿度が高いと汗が蒸発せず、体温が下がりにくくなるため、熱中症のリスクが上がります。
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さらに、直射日光の強さや風の通り具合も大きく影響します。
→ こうした複数の要素を1つの数字で評価できるのがWBGTです。
◆WBGTの目安(環境省・厚労省基準)
WBGT値(℃) | 危険レベル | 対応の目安 |
---|---|---|
31以上 | 危険 | 原則、作業禁止または中止 |
28〜31 | 厳重警戒 | 休憩時間を長く、頻繁に体調確認 |
25〜28 | 警戒 | 十分な水分補給と適度な休憩 |
25未満 | 注意 | 無理せず対策を継続 |
◆測定方法
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専用のWBGT計(日本産業規格適合品)を使って測定。
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屋内と屋外では計測条件が異なるため、作業現場ごとに測定・評価が必要です。
【まとめ】
今年の猛暑に備え、熱中症は「予防できる災害」として、早めの準備・対策を行っていただけたらと思います。
以上を参考に実施し、安全な現場作りが出来たらと思っております。
※参考資料:厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」